最近のモデルベース開発案件

前回に引き続き、(ありがたい事に)忙しいのでバージョン管理の話はお休みです。

さて、去年の5月あたりに、モデルベース開発が停滞するんじゃ?というような記事を書きました。しかし、最近そうでもない気がしてきました。

・投機的なモデルベース開発の研究

「うまくいったらそりゃすごいけど、まぁ実用化されるのは5年も6年も先かなぁ」

こういう雰囲気の開発については、一気に停滞しているように感じます。面白いネタはいくつかご提案しているのですが、なかなか話に乗ってきていただけません。(提案がヘボいだけという可能性はありますが・・・)

・既存路線の展開

「とりあえず、部分的にうまくいくことは分かってる」

「AUTOSARや適合などの領域に、モデルベース開発を適用」

今期は、こういったお仕事がほとんどでした。

たとえば、今までお付き合いの無かったお客様からOpenPLATEをお買い上げいただきました。用途としては、ラピッドプロトっぽい感じのものからHILS、実行可能な仕様書までまちまちですが、共通して言えるのは「これまでに、ある程度実績が出ている領域」という点です。

あとは、AUTOSARや適合がらみの開発案件をいくつもいただいています。これらは元々モデルベース開発とは別の概念ですが、モデルベース開発との関連もあるため、うまく調整してやるツールが必要です。

あと、「モデルベース開発を進めたいんだけど、何から手を付けたらいいんだろう?」というようなご相談をいただき、レポート作成をさせていただく、というような案件もありました。

(今年度は大量のキャッシュを失うはずだったのが・・・気が付いたらトントンになってる・・・あれぇ?)

・いただけるお仕事が増えている領域

大まかな傾向として、「あまり難しい事をしようとすると、うまくいかない」というのがあると思います。そんなに手間をかけないで、そこそこ成果が出ればいいや、と。個人的に、こういうアプローチは大正解だと感じています。

ちなみに、いただいた案件はほぼ全て「モデルで制御ロジックを書く」事に関する物です。モデルで制御ロジックをかいてざっくり動かすというのはとても楽なので、費用対効果でみると良い買い物のように思います。

一方、「モデルで物理現象をシミュレートする」パターンについては、苦労されているケースが多いように思います。出来あいのモデルを流用するのはアリですが、ガッツリとモデルを作るのは大変です。そこまで苦労するなら、実車に載せてテストなり適合なりしたほうが楽じゃない?という部分があるように思います。ガッツリとモデルを書くのがうれしいのは、実機試験がとんでもなく難しいものに限られる気がします。(実機の規模が大きすぎる、最先端すぎて実機が用意できない、など)

・ホットな領域

AUTOSARやモデルベース開発へのお客様の関心の裏側にあるものの1つが「部品化、共通化」であるように思います。

AUTOSARなんかはモロにSoftware Componentというソフトウェア部品を使いまわそうという話です。AUTOSARでは無いのですが、独自にプラットフォームを構築していらっしゃるお客様も見えます。またモデルベース開発でも、ブロック線図で書いたら、一部のロジックだけをポンと入れ替えるのもラクなんじゃないの?という期待があります。そのためか、最近のSimulinkはモデルの部品化に関する機能がドンドン拡充されています。

この路線はしばらく続くでしょう。しかしそのうち、ソフトウェア部品同士の組み合わせは本当に正しいの?というところに悩み始めるはずです。もう悩んでいるはずですが、それが深刻になるのは景気が本格回復する4~5年先でしょうか。ソフトウェアの部品化、共通化がある程度うまくいくようになり、こりゃいいやっていうんでソフトウェア部品数をガンガン増やし始めたところで・・・ヤバイ!これどうやって品質確保するの?という話になると思います。

それに対処するためには、今から手を打たないといけません。今あるツールとは根本的に違った考え方が必要になるでしょう。そのためのアイデアならあるのですが・・・そんな投機的な案件は今のご時世やらせてもらえません。どなたか予算を・・・予算をください・・・