グラフ印刷ツール(ごく一部でバカうけ)

あれはたしか今年の1月、某社のとってもとってもえらーい方に年初のご挨拶に伺ったときの事。

「ペンレコで、とったデータを印刷したいんだけど、いい方法ある?」

と、突然のフリを頂きました。ペンレコっていうのは、ながーい紙にひたすらグラフを書いていくための装置です。主に、計測結果の出力に使います。計測すると同時にグラフを書くには、たぶんこれしかありません。

ところが今回は計測データをいったん電子データ化したあと、印刷したいとの事。要するに、「パソコンの画面だと見にくーい。紙に印刷して見たいよぅ。」という動機です。

「そんなの、ロール紙対応プリンタで印刷したらイチコロですよ」と提案書を書いてみたところ、「よし、やってみろ」と予算をつけていただき早速ゴー。出来上がったのがこんな感じです。

ロール紙への印刷結果。タテは420mm、ヨコは1mでも10mでも自由自在

(特にえらーいお方に)とってもバカうけのようで、「ウチの部では、計測波形はすべてこのツールを使って印刷する事にする。そうでなきゃ、報告に持ってきても見ない」という事になっているそうです。

その結果、ここ数ヶ月でロール紙を200mも消費されたとの事。(しかも、消費ペースがどんどん上がっているのだとか。)有効活用していただいて、ありがたいことです。

さらに有難いことに、「外販してもいいよー」と許可をいただき、このたびNEATさんから販売される事になりました。

スクリーンショット

使ってるところをざっくりご紹介します。

ツールを起動したところ

 データを読み込んでみる。(今回はMATファイル)

 信号一覧が左側にあらわれる

 グラフを1枚追加

 グラフの上に、信号をドラッグ&ドロップ

上の図はただドラッグ&ドロップしただけの図です。色とか線種とか最大値・最小値とか、あとから調整もできます。

 マウスカーソルを近づけると、各信号の値が表示される

 そこでダブルクリックすると縦線が引かれる。
スケールの左側には、その時点の値を表示する欄ができる。

印刷ボタンを押したところ。ここで「印刷」ボタンを押すと、印刷が始まる。

グラフのサンプル

本当はロール紙に印刷したものをお配りしたい所ですが、それはムリというもの。そこで、PDFをご用意しました。

グラフPDF

これは、Simulinkに付属のサンプルモデルを動かしたときの結果をグラフ化したものです。

これをプリンターで印刷したあとで、気になるところにひたすらラクガキするなり、付箋を貼るなりします。

ちなみに、ちょっと特殊なPDFなので、Acrobat Readerのバージョンによっては見られないかも分かりません。PDF X-Change Viewerなら間違いなく見られます。

ペンレコとの違い

ペンレコのほうが優れている点

・ペンレコでは、計測するのと同時に印刷されます。一方、この製品は計測後、すなわち全データがそろった後でないと印刷開始できません。

ペンレコより優れている点

・10chでも20chでも、必要なだけチャンネルを使用できます。ペンレコで20ch対応とか、まず無い(あったとしてもバカ高い)と思います。

・プリンタは民生品(EPSON PX-6250S)を使用しますので、コスト的にも有利です。チャンネル数の多いペンレコだと数百万しますが、この製品はプリンタ+ソフトで100万以下(5システム以上のご購入であれば、プリンタ込みで1システムあたり50万前後。)です。

ちょっとしたこだわり

グラフを作る際、横軸(時間軸)も縦軸(データ軸)も、すべてmm単位で指定できるようになっています。(たとえば、時間を「1秒 / 10mm」としたり、スロットル開度の上下限を30mmとしたり。)

これには、時間や値の変化を「定規で測れるように」したいという意図があります。また、「ロール紙とロール紙をつき合わせて、正しく見比べられる」ようにしたいという狙いもあります。

従来のA3用紙なりA4用紙なりに印刷するツールでは、グラフ毎に縮尺が変わってしまいます。むりやりA3に押し込むためには、仕方の無い事ではありますが、それだと、紙と紙で比較をしようとしたときに(前回の実験結果と、今回の実験結果を見比べてみよう!)、見比べようがありません。

しかし、このツールのように「1秒 / 10mm」と明確に定義さえしておけば、ユーザーは縮尺がどうのとか気にする必要はありません。何も考えずグラフとグラフを見比べればいいですし、「ここからここまでで何秒?」という事が知りたければ、定規を当てて長さを測れば済みます。

おわりに

世の中には完全にペーパーレス化した会社もあるというのに、時代に逆行するかのようなこの製品。最初に話を聞いたとき、一瞬「ん?」と思ったのですが、よくよく考えてみたら間違ったアイデアではありません。

ワードやパワポで書いた資料なんか、紙で見ようがPCで見ようがいっしょです。しかし、計測データに関しては、グラフの微妙な動きが重要な事もあります。そういう微妙な動きっていうのは、せまーいPCの画面で見てても気がつきません。大きな紙に印刷して初めて、そういうのが目に飛びこんでくるものなんですね。

とはいえ心配だったのは、「紙に印刷するなんでダサーイ」と感じる若い方々に受け入れられるかどうかでしたが、これも心配無用でした。上司から「これで印刷したものでないと、報告を聞いてやらない」と言われれば、そりゃ使いますよね。

あとは、現場で使っていただく方が苦労しないよう、使いやすいツールにするだけです。そのため、「なるべく、ドラッグ&ドロップか、ダブルクリックしてるだけで何とかなる」よう、使い方のシンプルさには特に気を使っています。